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高さ10m程のその切れ込みは奇怪なまでにうねっていて、まるで空間がねじ曲げられているようだ。



手前の河原の開けた雰囲気とゴルジュ内の異様さとのギャップがあまりにもありすぎて、そこに踏み込んでいくことをためらわせる。

だけどペコマもG_Enkidu氏もゴルジュの入り口を目の前にして興奮を隠せない様子だ。

俺も気持ちは一緒だ。

またもやペコマが先陣をきって淵に入っていった。



入り口の淵は流れが巻いていて、まるで誘い込まれるようにゴルジュの奥へと入っていった。



右壁は大きく庇状に張り出している。

左手の岸に上がろうとしたけどツルツルに磨かれていて何も手掛かりがない。

3人とも全身のフリクションを駆使して何とか淵から這い上がった。



左壁は大きく頭上に覆い被さっていて威圧感を感じる。



まるで巨大な生き物に飲み込まれて胃袋の中にいる気分だ。

そこからすぐ先に核心の4m滝が見えた。



取り付きの岩棚に上がって右壁の様子を伺った。



取り付きから見る限り手懸かりとなりそうなホールドは繋がってるけど、問題は足場だ。唯一足掛かりとなりそうな岩肌のヒダもかなり外傾している。



そのすぐ下には、降り続く雨で増水して緑色に泡立つ滝壺が、まるで巨大な洗濯機の様に激しく渦をまいている。



足が滑って落ちれば生きて上がってこれるか分からないな・・・

そう考えつつも早くトライしたい気持ちの方が強かったから早速フェルトシューズのまま一番手で取り付いた。

出だしはおそらくピトンスカーと思われるカチホールドがあって、足も乗れないことはない程だ。

だけどそれに続く箇所がホールドも遠く、足もスメアリングのフリクション勝負でバランスも悪い。

今にも滑ってしまいそうな爪先と右カチで耐えながら遠くのホールドに左手を伸ばしていった。



よし、届いたぞ！

と思った瞬間、手と足が滑って滝壺に落ちてしまった。

水面に出ようと必死でもがいたけどなかなか浮き上がれない。



これはマジでヤバいぞ・・・

一瞬だけ水面に顔を出すことができたけど、十分息継ぎすることも出来ず、自分が滝壺のどこにいるのかも確認できないまま再び水中に引き込まれていった。

それでもなんとか水面に出て、深くえぐれた側壁にしがみついた。

水流の巻き返しに引き剥がされそうになりなるのに甘いホールドで耐えて、何とか無事に水から上がることができた。



いや、ほんと溺れて死ぬかと思ったよ・・・

続いてペコマがフラットソールに履き替えてフリーソロでトライを開始した。

核心パートで頭の上の被ったフェイスにいいホールドを見つけたようで、一発で突破した。



さすがペコマ！

G_Enkidu氏もフラットソールで一撃だ。



俺もJET7に履き替えて2度目のトライ。

そしたら全然フリクション違うじゃん！

やっぱ岩が濡れててもヌメってなければフラットソールの方が効くな。

ペコマの見つけたホールドも使って、１トライ目の苦労が嘘のように簡単に核心パートを抜けることができた。

そこからはガバガバでスタンスもよくて、最後、滝の落ち口への乗り移りが滑り落ちそうで緊張したけどクリア！



ムーブもボルダーチックでなかなか面白かった。

3人とも無事（？）にフリーソロで核心の4m滝突破に成功した。

だけどそこまでだった。



滝の上流すぐに出てくるゴルジュ最狭部はあまりにも流れが激しすぎて全く太刀打ち出来なかった。

それでも何とか助走をつけて流れに飛び込んでみたけど呆気なく流されてしまう。





こうもどうしようもないと、もう笑うしかない。

潔く敗退を決めて下ることにした。

ま、そろそろタイムリミットも近づいてるしな。





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