TOP | ソロクライミング | リード・ボルダー | 山行・アルパイン |
コンペティション | 沢 | その他 |
北アルプス/槍・穂高
屏風岩東壁 雲稜(敗退)
2015年8月16日〜17日
《プロローグ》 2005年の8月、北穂高岳にある山小屋にスポットをあてたテレビ番組に触発され、一人で奥穂〜北穂を縦走した。 そのときは登山のことなんてほとんど何も知らず、ジーパンに綿のシャツに上着だけのウィンドブレーカーという、今から考えれば非常識な身なりで、おまけに上高地から岳沢の登山道を登り始めたのは昼の12時を過ぎていた。 幸いほとんど雨にも降られず、晴れた夏の岩稜歩きにすっかり魅了されてしまった。 涸沢からの下り道で眼にした屏風岩と言う名の岩壁は、これまで見たこともないスケールで視野いっぱいに立ちはだかっていた。 その時はそこを人が登れるなんて想像すらできなかった。 あれからちょうど10年になる。 節目と言えなくもない年だ。 本当は初めての穂高屏風では「フリークライミング」のソロをやりたかったんだけど、仕事が忙しくて去年のバットレス以来一度も山に入ってなかったし、外岩やジムすらまともに行ってなかったから、流石に「フリークライミング」は無理だ。 だけどこの節目の年に是非屏風岩を登りたいと思った。 できればオールフリーで登れるルートを登りたいと思って、初めてまともに屏風岩のトポを見てみたけど、今の俺がソロでオールフリーで登れるルートなんて存在しないことが分かった。 それでもできるだけエイドセクションが少ないルートとなると、候補はおのずと絞られた。 この壁の一番人気で歴史的価値も高い雲稜ルートは、1ピッチの人工登攀を除いては基本的にフリーで、グレード的にも挑戦しがいのあるルートだ。 登るルートが決まると、更に余計な考えが頭に浮かぶ。 5日も休みがあるのに雲稜だけでは行程が短すぎてもったいない。屏風岩で他のルートをもう1本登るなら同ルート下降することになるけど、同ルート下降ってのはあまり好きじゃない。 それに折角なら屏風の頭まで抜けたい。 その先にある前穂北尾根に継続するってのがオーソドックスなやり方なんだろうけど、前穂北尾根は一度登ってるし、水が補給できないって理由からこの案は捨てた。 そこで思いついたのが奥又白池経由で前穂W峰の壁を登るプランだ。 これなら全く初めての壁を2つ継続できるし、水も補給できて、最後は3000m峰のピークに立てるっていう理想的なラインだ。 W峰は正面壁の北条・新村ルートを目指すことにした。 プランが固まると急に不安になってきた。 去年のバットレスもそうだったけど、年1〜2回しか山に行けてなくて体力が相当落ちてるこの俺に、こんな行程本当に単独でこなせるのか? でもちょっと考えてから心配しても仕方ないと思い直す。 エスケープもし易いルートだし、ダメだったらダメでいいや。少しでも勘を取り戻すってくらいのつもりで行こう。 →次へ |