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利根川水系
赤谷川本谷
裏越ノセン〜ドウドウセン登攀 2012年7月28日〜29日
《プロローグ》 こんなに情熱的な片思いを最後にしたのはいつだろうか・・・ ちょっと風変わりな名前を持った彼女のことを知って興味を持ち、彼女のことを色々と調べてみた。 彼女は近付き難い存在であり、そう簡単に人を寄せ付けはしない。彼女へアプローチするだけでも数々の困難を切り抜ける必要がある。 彼女は裏の顔も持っている。彼女をモノにするにはまずこの裏の顔から攻略しなければいけない。 彼女のことを知れば知るほど、その魅力に惹かれていった・・・ 日に日に彼女のことを思う気持ちは強くなり、仕事中も気付けばまだ見ぬ彼女とのアレやコレやを妄想していた。 時間があれば彼女のことを調べ、どうやって落とそうかと色々と策を練ってきた。 あの手この手で彼女を攻めて、A、B、C・・F、G・・ ムフフ ♡ 初めて彼女を全裸にしたのは東大スキー山岳部の二人で、約30年前のことだ。このときは真っ向勝負ではなく、背後からのアプローチだったようだが、彼女の魅力を世に知らしめた功績は大きいだろう。 彼女に近付こうとする輩はいるが、大抵は彼女を目にすることはなく、遠く避けて通りすがるしかない。しかし中には勇敢にも正面からアタックして、彼女の心を射止めた者もいた。 今回彼女を落とすにあたり、これまで心を許した相手の記録を紐解いてみた。 「ドウドウセン」、これが彼女の名前だ。 谷川岳稜線上のオジカ沢ノ頭を源頭に持つ赤谷川、上流部は両岸が数百メートルにもなるV字谷で、その最深部にドウドウセンは存在する。 赤谷川本谷の遡行は、支流の一つであるエビス大黒沢の出合から始まる。 登攀的要素の濃いこの谷は、マワット下ノセン(20m)、マワットノセン(15m)、裏越ノセン(6段、70m)、そして核心部となるドウドウセン(13段、90m)と、それぞれが十分過ぎる規模の滝の登攀に終始する。 それに加え中間部の巨岩帯も、一つ一つが“家ほどもある”と表現されるボルダーが谷底を埋め尽くしていて、ライン取りは正に迷路のようだ。 そんな険谷を越えると、一気に渓相は変わり、穏やかに流れる沢筋と解放感溢れる草原の中を谷川岳の稜線へと導かれ、最高のフィナーレを演出してくれる。 裏越ノセンとドウドウセンには高巻きルートが存在するため、それなりの入渓者を迎えているようだが、直登の記録は多くはない。 「Young Climbers Meeting」の特集ページ、「ゴルジュ突破やろうぜ!」及び「マイナーピークハンターズ」に主な文献一覧(下降を含めた7件)が載っているが、それ以外にウェブ上で知り得る記録としては、かっきー&moto.pペア(2009年、ドウドウセンのみ)、 舐め太郎&B.B.ペア(2011年、“斜め突破”)、大西氏(2009年、単独遡行)の3つだ。 中でも大西氏の単独直登の記録は貴重で、今回の遡行では大いに参考にさせてもらった。 《決意》 今回の遡行の目的は自分の実力を見定めることと決めていた。 これまで沢登りの経験は、鶏冠谷右又、荒川真ノ沢、三郎ノ岩道窪、大常木谷、ホラノ貝ゴルジュのわずか6回しかないが、たったこれだけの遡行経験でも沢登りの魅力とその先にあるものを感じるには十分だった。 特に大常木谷の千苦ノ滝登攀は、フォローではあったけど、未知のラインに対する開拓意欲を大いに掻き立てさせられた。 しかしこれから挑戦的な沢をやろうにも、自分の実力がどれほどのものかがまだ分からない。 かといって簡単な沢から徐々にステップアップなんてやるには時間が勿体ない。 今の自分がどれだけのことをやれるのか、そして何が足りないのかを知るには、誰もが認める難谷に打ちのめされてくるのが手っ取り早い。 今回は未知への冒険という沢登りの最大の魅力の一つを犠牲にして、手に入った情報は全て吟味した。 先人達の足跡に一体自分がどれだけ近づけるのか、そしてそれを一歩でも踏み越えることが可能なのか。 谷川、いや国内有数の名渓と言われる赤谷川本谷を舞台に、自分自身と見つめ合うべくソロでの挑戦を決意した。 《出発》へ→ |