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多摩川水系/一ノ瀬川
大常木谷 千苦ノ滝登攀
2012年6月2日〜3日
←プロローグ〜遡行前半へ戻る 《千苦ノ滝登攀》 滝の半分までは右壁も左壁も登れそうだ。 でも落ち口付近はどちらもハングしてそうに見える。 しばしラインを探して両壁を眺める。 抜け口は右岸の方が可能性を感じる。 ペコマはフラットソールを試してみたけど、滑り過ぎて立ってもいられなかったらしい。 また沢靴に履き替え登攀準備をして左壁を登り出した。 最初はV級程度の階段状だから、中間部のバンドまではランニングをとらずに登って言った。 そこでフレークにナッツを決めて、バンドを一段上がると落ち口だ。 悪い体勢でハーケンを一本打ち、二本目のランニングをとった。 さぁ、ここからが核心だ!! 頑張れペコマ!! ややハング気味の壁からなんとか体を反らしてリップを探っている。 固唾をのんでそれを見守る俺とチッペ・・・ 両手でリップを掴んで右足でハイステップを決め、慎重に体をズリ上げて行った・・・ よし!!抜けたぞー!! と思ったら滝の落ち口より上部がナメていて、慣れない沢靴では立ち上がれないようだ。 水流を受けながら全身のフリクションを使ってズリズリ上がって行っている。 まずいぞ・・・ もしこのナメで体が滑ったら、水流の向きからして滝の流れとともに間違いなく真横に飛ばされるだろう・・・ ペコマが打ってたハンマーの向きから推測すると、最後のハーケンは壁の正面方向に打ってたから、空中に飛ばされればハーケンが抜けてしまうんじゃないか・・・ 抜けないにしても空中で振り子となって壁に正面衝突するのはほぼ確実だ。 でもどうせ下から叫んでも声は聞こえないだろうし、後戻りは出来ない位置まで上がってしまってる。 それにそんなことはペコマ本人が一番認識してるはずだ。 25m下からでも、ペコマが落下の恐怖と葛藤して必死に這い上がっている様子が分かる。 時間をかけて数十センチずつ上がって行き、なんとかナメの端までたどり着いた。 そこでもう一本ハーケンを打ち、側壁伝いに滝を抜けた。 やったぞペコマ!! 今回の最大の核心、千苦ノ滝登攀に成功だ!! しかも残置は使わず、フリーでだ!! ライン取りも既存の情報に頼らず、自分の描いたラインでの登攀だ!! ペコマは安定した対岸に渡ってビレイポイントを作り、荷揚げのため補助ロープを投げた。 だけど見事に途中のバンドに引っ掛かり、仕方なく俺がロープの末端を拾いに登っていくと、そこには残置スリングが掛かっていた。 右壁も登られてるのかも知れない。 ペコマが自分のザックを引き上げると、いよいよ俺達の番だ。 二人ともザックを背負い直し、まずはチッペがメインロープの中間に確保を取り、ペコマと同じラインで登り始めた。 左壁は登り始めのホールド、スタンスが甘くて、最下部が以外と登りにくい。 リーチのないチッペは慎重に狭いスタンスを拾って登っていく。 5mほど上がったところで、メインロープが弛んでたから、 俺「もっとプルージック上げなよ。」 チッペ「いや、プルージックじゃなくてビレイされてるんだけど・・・」 その瞬間!! ツルッ! ビョヨ〜ン、ボフッ!! チッペがスリップして落ちてきた!! メインはダブルロープ一本だったから、ロープが伸びてグランドフォールしたけど、背中から落ちたことで背負ってたザックが衝撃を吸収して怪我はなかったようだ。 その姿があまりにもおかしくてつい吹き出してしまった・・・すまん(笑) さぁ!気を取り直して登攀再開だ! チッペは下部を別のライン取りで無難に抜け、1つ目のランニングまで順調に上がっていった。 そこでロープの残りが無くなったから、俺は1ピン目のバンドまでは確保なしで上がることにし、そこでペコマがフレークに決めたナッツでセルフをとった。 チッペはもう一段上のバンドで核心部に入ろうとしていたけど、ザックを背負った状態だと薄被りの核心部はかなり悪そうだ。 結局チッペは諦めてテンションし、ペコマの打ったハーケン+スリングに足を掛けて乗越そうとしたけど、それでも体をナメまで上げきれない。 しかもハーケンは浅打ちになっている。 仕方なくザックをそのスリングにぶら下げて、軽身で核心を越えてもらって、後から回収することにした。 チッペは軽身だと難なく越えて行き、残りのロープはスルスルと上がっていった。 俺は末端をハーネスに結び、ロープがいっぱいになったところでナッツを回収し、バンドを一段上がって核心部へと入っていった。 核心部は足場が狭く、おまけに壁が張り出していて、ザックを背負っていると壁から剥がされそうになる。 フェイスはホールドに乏しく、まともなホールドは1つしかない。 それを目一杯保持って、体が剥がれそうになるギリギリまで立ち込んで、飛沫を顔に受けながら必死でリップを探った。 リップにガバを見つけ、それを持って体を壁から離し、更に反対の手でホールドを探ると、うまい具合にもう1つリップにカバがある。 両手でガバを持ってリップの末端に右足でハイステップして一気にナメに乗り込んだ。 壁から突き出したリップ末端の下には何もない25mの空間が広がっている。 すぐ横を滝の水が勢いよく中空に放出されていて、その空間に吸い込まれていきそうな錯覚に陥る。 死角になって見えないスタンスの右足を、恐怖心と葛藤しながら少しずつずらして大勢を変え、左足をナメに上げた。 落ち口のナメはそこまで悪くはなく、慎重に最後のハーケンまでたどり着いた。 そこからロープはビレイ点のある対岸に向かってる。 チッペのザック回収のためにまた戻ってこなければならないことを考えると、このハーケンからロープを外さない方がよさそうだ。 ハーケンに一端セルフを取り、対岸までの分のロープを出してもらい、ロープの中間で確保し直してから末端側のロープは最後のランニングにかけたまま慎重に対岸へ渡った。 とりあえずは俺も千苦ノ滝をフリーで越えたぞ!!! すぐに自分のザックを置き、また右岸に渡って側壁伝いにナメを降り、最終ピンまで戻ってきた。 ここからロワーダウンしてもらって核心部のチッペのザックとハーケンを回収し、最終ピンも回収して無事ビレイ点まで戻ってきた。 これでやっとパーティーとしての千苦ノ滝登攀終了だ!!! ⇒遡行後半〜ビバークへ |