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小川山
マイフェイバリットルート
2012年5月5日

…やっと履く度に悶絶しなくてすむようになってきた新しいソリューションのエッジは、今にも外傾した花崗岩のダイクから滑り落ちてしまいそうだった。

地上から40メートル、ロッキーロード(5.12a)の自己最高到達点を過ぎ、ノーハンドのダイクトラバースの真ん中までノーフォールで来たところで、まだ爪先感覚に慣れていないソリューションでトライし始めたことを後悔していた…











2012年GW後半戦も俄然だぜ!!




小川山のマラ岩は、外岩の楽しさにのめり込み始めた頃に毎週のように通っていた場所で、いわばホームエリア的存在だ。



初5.11cのRPはブルースパワーだったし、帰ってきた開拓王(5.11c)のオンサイトはベルジュエールの全ピッチオンサイトリードトライに挑戦する自信を与えてくれた。



届け手のひら(5.10c)は花崗岩スラブの醍醐味を教えてくれ、川上小唄は外岩初心者にミニマムボルトの洗礼を優しく受けさせてくれる好ルートだとひそかに思っている。



マラ岩に初めて行くクライマーなら誰しも、あの空中に突き出したテラスからの景観に感嘆の声を上げることだろう。



そしてそのテラスから空中に投げ出されるように取付くのが、日本初の5.13aルートであるエクセレントパワーの後半部、ロッキーロード(5.12a)だ!!



マラ岩に初めて行った時(2008年5月)から、このルートをいつか自分も登れるようになりたいなーと漠然とした憧れを抱き続けてきた。

そして早くも2008年の10月に記念すべきロッキーロ―ドの第1便を出している。

たしかこのときは下部核心のダイクへの乗り込みに相当苦労したように記憶している。

それから年に1〜2回のトライを細々と重ねてきて、便数を重ねるたびにこのルートが大好きになっていった。

まずは取付きからいきなり地上約30mの高度と露出感!



両腕いっぱいに伸ばしてもまだ足りなくて、ガストンした右手を指先まで伸ばしきってダイクへ立ちこむ下部の第一核心!



空へ向かって一直線に突き上げる、スカイラインのカンテ&ナチュプロセクション!



そしてこのルートの一押しパート、上部にある数メートルのノーハンドダイクトラバースだ!



このトラバース、いつになっても毎回息が詰まりそうになるぜ!壁に反射する自分の息遣いを頬で感じながら、「・・・vibram様、stealth様、どうか私に力を貸してくださいませ・・・」って祈りながら一歩一歩踏み出してるってのはここだけの話だからな!

そんな心臓が第5肋間鎖骨中線から飛び出してしまいそうなセクションをこなしても、最後の最後に待ってるのが甘いホールドでこなすスラブへの乗り込みだ。



ロッキー、そしてエクセレントに挑戦する多くのクライマーを泣かせてきたのが、このスラブパート。そんなクライマーたちはここまで落ちそうになりながらも何とかフォールせずに頑張って登ってきて、終了点を目と鼻の先にしながらもこう思うに違いない・・・

「あ゛〜〜っ、花崗岩なんて大っ嫌いだ〜!」って・・・

そんなこんななロッキーロードは、誰が何と言おうと自分にとっては★★★★★!マイフェイバリットルートなんです!



そして今回もまた、たまたまパートナーがいたからトライすることにしたっていうナンパな気持ちで戻ってきました!

毎回1便目は半年〜1年ぶりで、今回も同じように思い出し便だった。テラスの上でクライミングシューズに履き替えているときはいつも気が重い。



案の定、1ピン目でスメアがスリップしてフォール。その後もほぼ各駅停車でトップアウトした。

初回から数えて11便目にもなるとホールドとムーブ自体は何となく思い出せるけど、このルートはムーブそのものよりもムーブをこなすときのバランス感覚が重要となる。

特に上部のダイクトラバースは爪先に全神経を集中させて、シューズのラバーが面で効いてることを感じながら次の一歩を踏み出さないと容易にスリップしてしまう。

この日は初のトライとなるchippeと、冬の城ヶ崎で知り合ったドゥリー君がロッキーロードをトライしていた。シルクロード(5.12b/c)とエクセレントパワー(5.13a)も合わせると、計7人もの岩バカ達が日本のクライミング史の一端を感じようと、この大きな石ころの南面にかじりついていた。





そんなクライマー達のもがき苦しむ姿を楽しく眺めていると、いつの間にか自分の順番が回ってきてしまった。

こんなに大好きなルートなのに、どうして取り付く前に毎回憂鬱な気分になるんだろうと思う。

いきなりの高度と独特の露出感によるものだろうか?


本日2便目。

最初の核心ムーブを結構必死でこなし、ダイクに立ち込んで体勢を安定させてからレストして、カンテラインはテンポよくレイバックで上がっていった。



レイバック体制のままコーナークラックにキャメロット#1をセットし、これまでの最高到達点である上部ダイクの乗り込み手前に来た。

その場の思い付きでコーナーにヒールをかけるとノーハンドレストできるではないか!でもそんなに安定した大勢じゃないから適当にシェイキングして、気合を入れなおしてダイクへの乗り込みムーブを起こした。

左足でダイクを掻き込んで、さらに右足を慎重に寄せた。これまではここで力尽きてフォールしてたけど、なんとかギリギリダイクに立つことが出来た。



右手はカンテを保持しているけど、すでに左手で持つべきホールドはない。

息を殺してクリップし、意味のないチョークアップを無意識のうちにやって、意を決して一歩を出した。

この時点で右手はカンテから離れ、両手とも何もホールドを持っていない状態だ。もうここからはムーブをこなすとかそういう次元ではない。いかに岩の形状を観察してシューズを通して伝わってくる凹凸の感覚を信じるかだ。

なるべく右足の踵を落としてソールの面をダイクの傾斜に沿わせるよう意識しながらもう一歩左足を出した。

左手をいっぱいに伸ばすと左のカンテに指先が届いた。



・・・しかしカンテをつかんだ時にはすでに修正が効かない不安定な態勢になってしまっていることに気づいていた。

欲張って大きく一歩出してしまったため、今の左足のスタンスの位置では右足を寄せられない。

あるはずのないフェイスホールドを右手で探ったけど当然何も見つからず、左足のスタンスからもジリジリと滑り出しているような感覚が伝わってくる。右足をクロスステップで寄せれば安定した態勢がとれ、レストポイントのガバに届くのだけど、慣れないソリューションを通して伝わってくるスタンスの感覚は、曇ったメガネで物を見ているようで、スリップに対する不安感を煽るばかりだった・・・




・・・こんなにワンムーブを長く感じる瞬間はこれまでなかったと思う。フォール覚悟で右足を寄せてガバを取ると、叫ばずにはいられなかった。



もうここからは落ちられない!あとは最後の核心であるスラブパートのムーブをこなせば念願の完登だ!

ぜってー落ちね―ぞ!と何度も自分に言い聞かせ、吹きつける強風が緩むのを待った。

気合を入れなおして体を上げていき最終ピンにクリップをした。



最終核心部は甘いスローパーと向きのよくない浅いフレークを保持してのスメアリングからのハイステップだ。

右手でスローパーを持ったけど、右手はよれていて、これで体重を支えられるだけの保持力が残っているようには思えなかった。

ここまで来ておきながら、クライマー泣かせで有名なこのパートで、御多分に漏れず自分も泣き出しそうだった。

最後の最後までムーブが固まらなかったこのパート、ためらえばためらうほど保持力が失われていく。今この瞬間、完登に最も近づくためには、よれきってしまう前にこれまでのムーブを起こすしかない!

必死に冷静さを保ちながら、カンテの裏側で見えなくなったスタンスを踏みかえ、体をスラブ面に押し出し、祈るような思いで両足をスタンスから外した。



右足のハイステップを確実にきめ、体を持ち上げ、左足をスタンスに乗せて一気に終了点まで駆け上がった。



終了点にクリップする前から嬉しさがこみ上げてきて、思わず「よっしゃぁ〜っ!」て叫んでた。



3年半越し、計6日12便で遂に大好きなこのルートを完登することができました!ちなみにRPビレイヤーはchippeでした。ありがと〜!



その他、これまでこのルートのビレイをしてくれたクライマーはpecoma、石田さん、アニマルさんでした。ありがとうございました!

他のルートってRPした便は意外とあっさりスムーズにいってしまうんだけど、こんなに最後までハラハラさせてくれたルートは無かった。ますます好きになっちまったぜ!

完登してしまってちょっと寂しいけど、エクセレントパワーでまた触れることが出来るから、その時まで待ってろよ!



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