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北アルプス/劔・立山
別山岩場 ルート不明
2010年8月12日〜14日
《プロローグ》 2年前のリベンジを果たすべく計画した劔岳チンネ左稜線。 今回はペコマ&チッペ、それにヒロも加わって、4人でチンネをやろう!!ってことになった。 ペコマ&チッペはすでに何度か劔に足を運ぶも、紆余曲折あってまだその頂を踏んでないらしい。 ヒロは今回初の劔岳だ。 そして自分は2年前に初めて劔に来て、長次郎谷から本峰ピークを踏んではいるけど、当初の目標だったチンネ左稜線には行けなかった。 4人とも山から始めたクライマーで、今回はそれぞれの思いを胸に、急峻な岩峰の林立する劔の地に足を踏み入れることとなった。 《前夜》8月11日 出発 例によって前夜発で長野に向かった。 計画ではペコマとヒロが8月13日に入山予定だ。 そしてチッペはこの山行の前に、彼女自身初の単独行で、何と白馬から雲ノ平(!!!)までの6日間のスーパーロングトレイルをこなしてからそのまま劔入りする予定だった。 納車1週間でワゴンにぶつけられて廃車となったランクルの代車として用意してもらった、黒の新型マークXでビュゥゥン!と夜の中央道を快適に飛ばし、更科ICで高速を降りた。 休憩がてらコンビニによってmixiを開くと、チッペは烏帽子岳で身体的限界を迎えたらしく、どうやら下山して麓の宿に泊まってるようだった。 夜中の12時近かったけどチッペに電話して、翌朝車で拾って一緒に室堂まで向かうことにした。 この日は大町運動公園の駐車場に車を止めさせてもらって、マークXの助手席で夜を明かした。 《Day1》8月12日 アプローチ 翌朝チッペを信濃大町駅近くの七倉荘で拾って、そのまま扇沢へと向かった。 あいにくの雨の中、駐車場でパッキングをもう一度確認してアルペンルートのトロリーバスに乗り込んだ。 毎回のことだけど荷物が重い・・・ 今回のチンネはヒロとパートナーを組む予定だったけど、他の三人よりも1日早く劔沢入りする予定だったから、一本くらいソロをやれるだろうと思って登攀に必要なロープ、ギアは俺が上げることにしたのだ。 そして相変わらずのアルペンルートの混み様、各連絡駅では数十分待ちだ。 だけど今日は劔沢までのアプローチだけだからそんなに急ぐ必要もない。 チッペはすでにチンネの核心ムーブのイメトレしてるし。さすがですwww 黒部ダムで写真撮ったり、黒部平でソフトクリーム食べたりしながら室堂へとアルペンルートを乗り継いだ。 室堂に到着してとりあえずは昼ご飯を食べる。 チッペは今日、ここホテル立山で二人分の宿泊費を払って、昨日までの後立山大縦走の疲れを癒すらしい・・・ セレブ登山家チッペの摂食☆ 昼食の後、チッペと別れて嵐の中を一人劔沢へ向けて出発した。 雷鳥沢は濁流と化している。 雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ・・・ でもデジカメは雨に負けて壊れてしまった・・・ そして結局は自分も雨に負けて劔御前小屋に転がり込んだのだった・・・ 《Day2》8月13日 別山岩場 朝、劔御前小屋を出発して劔沢のテン場はすぐだった。 後の三人も今日ここまで来るんだけど、それまで時間がたっぷりある。 このテン場から東側の尾根を見上げると岩場になっていてそんなに難しくなさそうだ。 登攀の対象となっている岩場かどうか全く情報は知らなかったけど、アプローチもすぐだし時間つぶしにはちょうどいいやと思い、さっそくテン場で登攀具を準備した。 ちょうど室堂から来たチッペがテン場に到着したから誘ってみたけど、明日のチンネに備えて今日はテン場でゆっくりするとのことだった。 何も情報を持ってなかったけど、他にも1パーティーがその岩場に向かってたから、どうやら登られている岩場のようだ。 テン場から岩場に続くガレ場を適当にアプローチし、その途中で大体のラインの検討をつけながら岩場の基部に到着した。 岩を見るといくつか残置ハーケンが打たれているのが見える。 ということはどうやら登攀できるラインに行き当たったらしい。 ビレイして登ろうかどうか迷ったけど、ホールドは豊富にありそうだし傾斜も緩いからフリーソロで登ることにした。 残置ハーケンはあまり気にせずに自由なライン取りで高度を上げていった。 程よい緊張感を楽しみながら、最終的には尾根上の岩頭まで自然なラインをつなげることが出来た。 そうだ!これこそがクライミングの原点じゃないか! そしてそのライン上には所々にハーケンが打ってあり、この岩を見て自分と同じラインを見出した先人クライマーがいたんだ、と嬉しくなった。 尾根上を歩いて降りることもできたけど、せっかくだからと思って岩頭から懸垂で降りることにした。 降りたところはガレたルンゼになっていて、結構クライムダウンに苦労した。 テン場に戻ってしばらくするとペコマとヒロが到着したので、待ってました!とばかりにさっそく4人で乾杯した。 それからテン場にあったボルダーに勝手に課題を作ってみんなで遊んだんだけど、結構面白くてそれなりに難しい課題がいくつかできたから4人でガチトライして盛り上がった。 《Day3》8月14日 下山 夜中からテントを打つ雨の音に気付いてたけど、外が薄明るくなり始めてもその音は変わらなかった。 テント越しに相談し、結局この日のチンネは諦めることにした。 もともと天気予報があまり良くないのは知っていたけど、チンネをやめた途端に4人ともモチベーションが一気に下がり、下山することにした。 ちゃっちゃとテントをたたんで、ちゃっちゃと出発して、別山乗越をのっこして、雷鳥沢まで駆け下った。 ここまではいいペースで一気に来たけど、最後の最後に出てくる地獄谷から室堂までの登りはけっこうしんどくて、正に地獄から這いあがる気分にさせてくれた。 アルペンルートで扇沢まで戻り、そこからヒロの別荘に向かって、この日が誕生日のペコマの誕生パーティーをすることになった。 ほんとはペコマのためにチンネ後の劔岳山頂でのサプライズを準備してたんだけど結局それは実現せず、チッペが後立山の縦走のパッキングに忍ばせていた「26」歳のロウソクはヒロの別荘でのお披露目となった。 ヒロの別荘で夜中まで飲みまくり、騒ぎまくりの楽しい一夜を4人で過ごした。 そして翌朝、とんでもないサプライズを提供してくれたのはペコマの方だった・・・ 帰りのサービスエリアでサプライズの続きをやるペコマ☆ 《エピローグ》 今回は本来計画していたチンネ左稜線を登ることが出来なかったけど、暇つぶしで登ろうと思っただけの別山の岩場は、以外にも大切なことを思い出させてくれた。 自然の岩が提示したラインを見出し、それを1本のルートとしてつなげてピークを目指すこと、それこそがクライミングの本質だと思う。 だけど普段やってるクライミング、特にスポーツクライミングでは、ついついグレードだけに目がいってしまう。 本来は目の前の岩を読み解き、見出したホールド一つ一つに指先とフラットソールを馴染ませ、常にルートの先を読みながら高みを目指すことこそがクライミングの楽しみのはずだ。 それなのに、気付けばトポをなぞり、ボルトを追いかけ、仲間やwebからの情報を何のためらいもなく手に入れて、数字を追い求めることがクライミングだと思うようになってしまっていた気がする。 今回の別山の岩場でのクライミングは、レベルとしては何てことない登攀だったけど、久しぶりに岩を見てラインを見出すという感覚を思い出させてくれた。 テン場のボルダーも同じだ。純粋に目の前にある岩だけを見て、そこにラインを見出し、自分のムーブで一つに繋げられたときの喜びは何とも言えなかった。 この記事を書きながら頭に浮かんだのは石田登山塾の石田さんだ。最初にクラッククライミングを教えてくれた石田さんは、その翌日に三つ峠に連れて行ってくれた。 そして始めての岩場でトポを見ずに自分が思うがままのラインをリードで登るよう課題を出した。 もちろんランニングプロテクションは全てナチュプロだ。 「残置無視、トポ無視」 それはクライミングのほんとに純粋なスタイルだ。 このことを最初に教えてもらったからこそ、その後に出会った数々のルートに、他のクライマーが知る以上の奥深さを感じることが出来たんだと思う。 |